ホテルマンのシエスタより

かんたん
テーブルマナー入門


■□  フランス料理編  ■□
フランス料理の歴史
美食の国として、世界にその名を知られるフランスですが、フランス人も最初からグルメだった訳でもなかったのです。
現在のフランス料理の原形は、もともとイタリアからもたらされたものなのです。
15世紀まで、フランスの王侯貴族が食べていたのは、肉の塊を焼いただけの素朴なグリル料理や、素材をつぶしただけのドロドロのシチューなど、美食とはほど遠いものばかりでした。
食事スタイルも手づかみ同然で、現在のような洗練されたフランス料理のスタイルとはかけ離れたものだったようです。
ヨーロッパの片田舎にすぎなかったフランスに、ルネッサンス期の華やかなイタリア料理が伝わったのは16世紀前半のこと。メディチ家のロレンツォ2世の娘、カトリーヌ・ド・メディチがフランス王アンリ2世に嫁いだとき、お抱えのシェフや給仕人が随行し、料理道具や食器まで丸ごとイタリアから持ちこまれたのです。

同時に、テーブルマナーも伝えられ、それがフランスに、”食の革命”をもたらしました。
フォークやアイスクリームをフランスに伝えたのもカトリーヌだといわれています。
その後、美食王とわれたルイ14世の時代になって、イタリアに影響されたフランス料理は独自の発展を遂げ、しだいに華やかな宮廷料理文化に花開いていくことととなります。
フランスの国中から集められた食材が宮殿で調理され、調理人達は料理テクニックを競いあったのです。
ルイ15世〜16世の時代になると、食事のマナーも確立し、世界に名だたるフランスの食文化が完成したのです。

19世紀フランスの名著「美食礼賛」には、「教養ある人にして初めて食べ方を知る」「人を食事に招くということは、その間の幸福を引き受けること」といった格言が記されている。
フランスにおいて食文化は芸術であり哲学的考察の対象でもあるのです。

チョット自慢?)私はパリの”トールダルジャン”で食事をしたことがあります。(歴史・ストーリー・空間・シェフ)→クリック


テーブルマナーて何?
テーブルマナーとは決して気取って食べる事ではなく、同席者に不愉快な思いをさせないでいかに楽しくお食事が出来るか。という事が基本にあります。例えば隣りの人がズルズル音を立てスープを飲む。話しかけても反応ナシ。ナイフを振り回しながら大きな声で話す。これはマナー違反です。欧米ではテーブルマナーで人を判断する。とまで言われています。
テーブルマナーには、フレンチスタイル・ロシアンスタイル・イギリススタイル・アメリカンティファニースタイルなどがありますが、今回は一般に使われているオーソドックスなスタイルを必要な所だけかんたんに纏めてみました。
ここではお食事のマナーがテーマですが、お食事に限らず私たちは、「レジでは並ぶ」「上映中は会話しない」「室内に入ったら帽子を取る」「エスカレーターは右を開ける。関西は左です」など自然にマナーを守っています。
食卓でどのような行動を取れば良いか困った時は、どうすれば他人に迷惑をかけずに済むか。他人にどうしたら喜んでもらえるかという事を考えれば自然と答えは見つかるはずです。
そして、マナー違反の人がいても、よほど不愉快な行動以外は見て見ないふりをするのもマナーのうちです。
マナーで一番大事な事は”思いやり”です。テーブルマナーは決して肩のはるものではなく、慣れたらとても楽しくお食事が出来ますヨ。

@パーティが近づいたら、二日酔いや麻雀など控え、ベストコンディションで出席する。
Aまず、トイレに行って手を洗い、鏡を見て「私は綺麗」と自信を持って言えるようにしましょう。
B服装のTPOは守る事。違うと周囲から浮いてしまいます。


  テーブルセッティング  ◆
1.スープスプーン
2.オードーブルナイフとフォーク
3.フイッシュナイフとフォーク
4.ミートナイフとフォーク
5.パン皿
6.バタースプレッダーとナイフ
7.フルーツナイフとスプーン
8.デザートスプーン
9.ゴブレット
10.シェリーワイングラス
11.ホワイトワイングラス
12.レッドワイングラス
13.シャンパングラス
14.バターボールセット
15.カスターセット(塩・胡椒)
16.ナプキン
17.ショープレート
18.センターピース(花)
◆ フルコースのメニュー(例)  ◆
1. オードブル(前菜) ・・・ 英語ではアペタイザー 食欲をそそるものの意味。スモークサーモン・キャビア・テリーヌなどが有名
2. ポタージュ(スープ) ・・・ フランス語のポタージュとはスープ全体をさしている。正餐ではコンソメが多い。
3. ポアソン(魚料理) ・・・ 英語で言えば、フイッシュ。魚か海老が出てくる事が多い。
4. アントレ(第1の肉料理) ・・・ 直訳は入り口。ポークかビーフの料理が多い。
5. ソルベ(冷菓)  ・・・ シャーベット。アントレの口の中が油っこくなっているのをさっぱりさせる。シャンパンのソルベは有名。
6. ロティ(第2の料理) ・・・ 英語でロースト。蒸し焼き料理の事。七面鳥・鴨・キジなど。
7. サラダ(生野菜) ・・・ ドレッシングのかかった生野菜。
8. アントレメ(甘い菓子) ・・・ 英語でスイーツ。アイスクリーム・ババロア・プリン・ケーキなど。
9. フルュイ(果物)  ・・・ フルーツの事。季節のフルーツやメロンなど。
 10. カフェ(コーヒー)  ・・・ デミタスコーヒーが出される。リキュールやブランデーなど食後酒と一緒に別室で出される事もある。
※ワインについては、あまり飲み慣れていない人は、最初は無理せず、ドイツワインか軽めのロゼワインから入り、徐々にフランスワインに移行すると良いでしょう。

◆  決まり事  ◆
コートはクロークに預ける。(外からのほこりなどがついているので店内には持ち込まない。)

★椅子の左側から入り腰掛ける。テーブルと胸の間を握りこぶし一個半ぐらい開ける。
★ナプキンを取りひざの上に乗せる。折り目は手前に。目上の人がいた場合はその人が取ったら自分も取る。
 食事中に中座する場合は、テーブルの左上に軽くたたんで置く。椅子の上でも良い。椅子の背もたれに掛けるのはダメ。
★ナイフとフォークは外側から使う。
★ナイフは右手に。フォークは左手に持つ。
★フォークは背中を上に。フォークのみで食べる時は右手に持って内側を上にする。
★スプーンはペンホルダグリップで持つ。
★ナイフは口もとに近づけない。
★ナイフ・フォークは落としても自分で拾わない。ウェイターに拾ってもらう。
★大きな料理皿(プラッター)から料理を自分で取る時は、サーバーを使う。スプーンは右手に。フォークは左手に持つ。

◆  食べ方  ◆
1.オードーブル (前菜)
☆シャンパンorドライシェリー  ※最後(肉料理)までシャンパンで通しても可
◆オードブル盛り合わせは、上図のAのシルバーを使う。
◆エスカルゴが出たら、専用のトングを使う。ピンセットは左手に。フォークは右手に。
◆生ハムとメロンは、メロンを一口大に切り、生ハムも同じく小さく切り、メロンにくるんで食べる
2.スープ 
☆ワイン=白
◆スープは姿勢を良くして飲む。
◆スプーンはペンシルグリップで。左手で皿の端を持ち手前から向こう側へ運ぶ。音をたてないで口の中へ流し込むように。
◆両耳つきカップ(ブイヨンカップ)の場合は持ってもかまわない。  ※イギリスでは左手をひざの上に置くがこれは結構窮屈。
    フランスの普通のレストランではみんな外側から手前に集めてスープを飲んでいました。・・・?
◆飲み終えたらスプーンは上向きで皿の上に置く。            
◆パンは左側(上図参考)に置く。スープ終了ごろから食べて良い。一口ずつちぎって。
3.ポアソン (魚料理) 
☆ワイン=白
◆飾り彫りが入って綺麗なナイフとフォークが魚用です。最近はナイフの替わりにソーススプーンが使われる事が多い。
   この場合は右手スプーン、左手フォーク。一口大に切って食べる。魚料理は特にソースがおいしいので このスプーンですくって食べても良い。
    スプ ーンがついてない時はパンをちぎってソースをからめて食べても良い。
4.アントレ   (肉料理)
☆ワイン=赤
◆肉は左から一口大に切って食べる。付け合わせはフランス語で「ガルニチュール=飾り」だがきちんと食べる。
5.ソルベ (お口直し)
◆お口直しのシャーベットはシャンパングラスに入ってくるので足の部分を左手で押さえ食べる。 溶けないうちになるべく早く。
6.ロティ (蒸し肉料理)
☆ワイン=赤
◆ローストチキンが出た場合は、先に骨をはずしてから一口大にして食べる。骨の先端をアルミホイールで包み、紙の飾りが付いているがマナー的には手で持って食べてはいけません。 仲間だけの集まりならOKです。
7.サラダ (野菜)
◆サラダは肉料理の終わりのころに。油っこい口の中を酸味のあるドレッシングと冷たい野菜でさわやかに。
8.アントルメ (デザート)
◆三角のケーキは鋭角の部分から食べる。アイスクリームはウエハースと交互に。食べ終わったスプーンやフォークは受皿の手前に置く。一度口に入れたフォークやスプーンは正面の人に見えない所に置くのがマナー。
9.フルュイ (フルーツ)
 ◆半月のメロンの場合は、まずフォークを左側に差して押さえ、ナイフで右端から実と皮の間を最後を少し残し切る。次にメロンを半回転さて左端から一口大に切って食べる。 いちご、ぶどうは手で食べても良い。フインガーボールが出された場合、通常は席の左側だが中央に置 かれたなら、受皿がフルーツの取皿になるので、あなたはボールを乗せたままレースペーパーを両手で持ち上げ左前方に置かなければならない。フルーツが食べ終わったら、片方づつ指先をフィンガーボールに入れナプキンでふく。
10.カフェ (コーヒー)
◆コーヒーのサービスは、まずカップを置き、後からコーヒーを入れてくれる。砂糖を入れる時は、角砂糖をまず自分のスプーンの上に置きこのスプーンをカップに沈める。ミルクははねないよう低い位置から入れる。コーヒーのスプーンは受皿の向こう側へ置く。手前に置くと飲むときじゃまになる。口に入れていな いので大丈夫。ソーサは持ち上げない。 ほかの料理の場合も持ち上げないのが原則。




          マナーページへ    ◇    料理用語解説ページへ




マナーの歴史 補足

ヨーロッパでは肉食が多かったのでナイフ&手づかみで食べていました。
フォークは比較的新しい道具で、東ローマ帝国から11〜12世紀ごろにイタリアに伝わり、メディチ家のカトリーヌの輿入れでフランスに伝わります。
当時は2本歯で、長い楊枝(ピック)みたいな感じで使っていたようです。
しかしフランスですら長い間フォークは定着しませんでした。
というのも、キリスト教の影響があったようです。
何でも「食物に手を触れられるのは人間だけ」という考え方があったらしく、フォークで「食べ物に触れない」というのは逆に不道徳だったようです。
そのためフォークで食べる人は少数派。
イタリア帰りのイギリス人が本国でフォークを使ったら笑い物になったというくらい。
ヨーロッパの王侯貴族の間では18世紀になるまで「手で食べるのがお行儀」だったのです。
ただし手づかみ=野蛮ということではありません。
手で食べるのにも厳密なルールがあり、親指、人差し指、中指の三本でいかに優雅に食べるかがマナーだったのです。
フランス革命後、また産業革命後に「庶民」との違いを意識した貴族や上流階級の間でフォークやスプーンやナイフを複雑に使って食べる習慣が生まれ、以後テーブルマナーとして定着します。
つまり、それが近代における「文化的食事」となりました。
要するにナイフ、フォークを使った食事の歴史は「19世紀以後」という比較的新しいものなのです。

鎖国日本に来たオランダ人は当初はまだ手づかみなので、日本で箸を使う食事に驚いたなんて話もあります。
幕末の日本から欧米に派遣された侍はナイフとフォークの扱いに慣れず、マイ箸を持参して食事をしたところやたらと注目されて新聞の記事になったりしています。