ホテルマンのシエスタより
★ | 今、世界の一流ホテルが理想としているそのコンセプトとは・・・ | ★ |
オテル・リッツ・パリ Hôtel Ritz |
THE RITZ-CARLTON Photo |
リッツカールトン東京 画像 |
◆ 理想となっているホテルを分析 ◆ |
ここでは、現在、世界中のホテルが目標としている、Ritz-Carltonを資料を基に分析してみましょう。 起源は、1898年、スイス人のセザール・リッツがパリにホテル・リッツを創業する。彼は、ヨーロッパの数多くの有名ホテルでホテルマンとして働き、その中でお客様のニーズを細かくチェックし、顧客を増やしていきます。特に世界の富豪や王族が彼の虜になっていきます。パリのホテルリッツオープンした後、イギリスのカールトンホテルをオープンします。その後、パリのホテルリッツとロンドンのカールトンホテルが一緒になり名前が、リッツ・カールトンとなる。時を得てアメリカに進出し、現在のリッツ・ホテル・カンパニーが誕生する。一時経営難に陥るが持ち直し、マリオネットとの業務提携を経て世界中に超高級ホテルを展開することとなる。 イギリスのダイアナ妃が最後に泊まったホテルとしても有名。 今日の、感動を呼ぶサービスは、1983年、アメリカのアトランタに本社を設立した、社長のホルスト、シュルツィ氏によって基礎が築かれた。コンセプトは、「もう一つの我が家」。世界各地で五十余りのラグジュアリーホテルを運営している。(※Luxury=贅沢な/豪華な) 日本には、1997年大阪の梅田に開業した。2007年には、六本木の東京ミッドタウン内に、2009年には、横浜は桜木町の赤れんが倉庫近く、その後、京都、福岡、箱根にも開業予定だそうです。 また、他の外資系高級ホテルも相次いで開業又は開業を予定している。※コンラッド東京(2005.07)/マンダリンオリエンタル東京(2005.12)/ザ・ペニンシュラ東京(2007.09) ※今、日本のホテルに良い意味大きな変化が起きています。第一期は戦後の進駐軍からの影響。第二期は東京オリンピック。そして、今の第三期の円熟期にはいろうとしています。世界の一流ホテルが日本に進出する事によって、その高度なマニュアルも一緒に入ってきます。 この度のリッツ・カールトンの教育やコンセプトなどを雑誌などを惜しまず公表しているのは、絶対的な自信と、ホテルをほんとうに愛しているからなのでしょう。 世界は広い・・・ですね。 |
◆ 日本のホテルとリッツの相違点 ◆ |
さて、ここで日本を代表するホテルと、このリッツとの相違点を考えてみましょう。 日本の大型ホテルは、客室500~1000室を持ち、宿泊、料飲、宴会、婚礼の4本柱で構成され、宿泊がフル稼働しても、他のどこかの部門が落ち込めば、即座に経営効率は悪くなります。 90年代に入ってバブル経済の崩壊で多くのホテルが経営難に陥ったのは、巨大な収入源であった、婚礼と宴会部門の急激な落ち込みが原因です。これは、FB部門に偏りすぎの構造的な問題が挙げられます。 これに対し、ザ・リッツ・カールトンやフォーシーズンズなどのラグジュアリーホテルでは、客室数を250~300室未満に押さえ、この部屋数で収益が上がるよう設定している。当然ながら高単価となるが、リッツ・カールトンでは、サービスを充実する事で宿泊部門の収益性を高め、ブランドイメージを構築している。宿泊イメージが高まれば、ブランドイメージも定着し、それに伴う、他施設も当然向上することとなる。 日本のホテルは、所有者が同時にオペレーションも行うが、リッツ・カールトンは、オペレーションのみを引き受け、ブランドロイヤリティーを徴収するビジネスモデルとなっている。 オペレーションを引き受ける条件として、ブランドイメージと合致しなければどんなに利益があがろうと絶対手を組まないという。ブランドイメージの維持の方針が徹底している。 |
◆ 人材の確保 ◆ |
サービス業の原点である人材の確保についても、日本のホテルとは相違点がある。日本のサービス産業は、製造業中心の物づくりこそビジネスだという発想の中で軽視されてきた歴史があり、良い人材が確保できなかった。 教育にしても、「人は叱って育てろ、仕事は盗んで学べ」という徒弟制度さながらの人材教育であったので、優秀な人材はどんどん辞めていき、殴られ強い人材だけが残るという業界特有の体質があった。 こうした事情もあり、日本のホテルのスタッフは、プロではあるが仕事を楽しくしているように見えない。 ザ・リッツ・カールトン創業者のシュルツィ氏はザ・リッツ・カールトン大阪の開業の際「日本のホテルは素晴らしいが、スタッフが喜んで仕事をしていない。ホテル業を通してプライドとジョイにとり組めば我々に勝算がある。」と語ったといわれている。 また、日本のホテルの新規開業の時のスタッフ集めは、欧米のように、サービス業に適した人材を確保する専門のコンサルタント会社がなかった為、どうしても縁故に頼らざるをえない事情もあった。 ザ・リッツ・カールトンでは、有能なサービス産業に働く適性を備えた人材を確保するため、専門のコンサルタント会社にたのんで人材評価モデルを策定し、採用に活用しているという。これによって、ホテルマンとしての資質を客観的に評価することが可能で、適性のない人材を排除出来るという。 彼らは、もともと才能がない人間にはホテルマンは勤まらないし、その適性は教育では磨けないという考えがある。 |
◆ リッツの教育 ◆ |
ザ・リッツ・カールトンでは、四つ折りにするとほぼ名刺大になる、理念と行動指針を記した「クルドカード」を従業員全員に携帯させ、企業の考え方を基本に、科学的でヒューマンな教育がなされている。 クルドカードの内容は、「リッツ・カールトン・ホテル」はお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供する事をもっとも大切な使命とこころえています」という文面から始まっている。この他にも、クルドを具体化する「サービスの3ステップ」「従業員への約束」「モットー」「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」が記載されている。たえず読みながら自分の行動と照らし合わせている。理解し行動に応用するよう心がける。 |
◆ 明快な戦略 ◆ |
これまで、日本のホテルはどのような客をビジネスの対象にするのは、明快な戦略はなかったように思う。これが、成金的な豪華を争う内外装となった大きな理由でもある。 リッツ・カールトンは、世界の富裕層のうち、上位5%を顧客と設定し、彼らが気に入るものを作り上げ、サービスしようと決めている。この顧客層に提供するのは、「もう一つの我が家」である。世界中何処へ行っても、ザ・リッツ・カールトンに宿泊すれば我が家に帰ってきたと感じるもてなしはもちろん、内装、調度品、サービスクオリティなど、ソフトソフトウェアからハードウェアまで顧客に感動を与えるサービスを心がけている。 感動というものは相手に予期せぬ事をしない限り生まれない。しかし、人は感動すれば印象として残り、それが、口コミとして広がっていく。 |
◆ リッツ・カールトンのサービス ◆ |
それでは、日本のオークラや帝国、ニューオータニとリッツ・カールトンのサービスとはどこが違うのか。 リッツ・カールトンの社員は、「紳士淑女をおもてなしする私たちも紳士淑女でなければならない」という事を徹底的に学ぶ。従業員は召使いではなく、顧客と同様に紳士であり、淑女として働いていなければ本物のサービスは提供できないという考え方である。 これは、スタッフが常に笑顔でいられる事にもつながっている。リッツ・カールトンが顧客満足度同様に、従業員にも徹底的にこだわっているからだ。 従業員教育の基本的な考え方は、顧客を心からおもてなしし、満足してもらうには、従業員自身が心から満足していなければならない。という事にある。 従業員が現状に不満を持っていると、それは、すぐに顧客に伝わってしまうという考え方である。つまり、従業員が紳士淑女としてもてなされていれば、顧客に対してもそのような気持ちで接する事が出来る。という考え方である。 このため、マネジャーは、従業員に敬意を払い、どんな意見にも耳を傾け、意見をとりあげようとする。そういう環境が整えば、従業員は、お客様に対し、明るく、前向きにおもてなしができるのだ。 その為、顧客満足度と同様に、従業員満足度の調査も行い、働きやすい環境作りを心がけている。 環境作りは、社外だけではなく、社内や協力企業に対しても行われている。リッツでは、協力企業が数多くあるが、彼らのために飲み物がいつでも用意され、協力企業のスタッフは自由に利用出来るようになっている。 この理由は、そんな事があっても、リッツの仕事は遂行しようという協力会社のモチベーションが高まるからだ。 このホテルでは、1回目より3回目そして10回目と利用頻度が増す毎に満足は向上していく。 それは、ゲストヒストリーと呼ばれるデータベースに顧客の好みの嗜好などの情報が蓄積されていき、妻や夫あるいは両親よりも自分を理解してくれていると顧客に感じさせるようなサービスが提供されるからだ。 |
◆ 一人一人に対応するカスタマイズサービス ◆ |
その顧客はどのような人で、どんな好みを持ち、どうしてほしいのかを知るからこそ高度な接客が可能になる。スタッフは、自分が取るべき対応の基準を、顧客が満足するかどうかで判断する。 「これをするとお客様は喜ぶだろうか、幸せになるだろうか」を判断基準にして、常に行動するのである。 ただ、儀礼的に、「いらっしゃいませ」と挨拶するのでは、顧客の心には響かない。 例えば、クラブフロアに宿泊すると飲み物や軽食はフリーで常連客なら毎回声をだしてオーダーする事もない。前回宿泊したときの記憶をもとに「○○様、今日もアップルティーでよろしいですか?」などと話しかけられ、限りなくフレンドリーな関係がかもし出され、顧客を喜ばせるのである。 また、ルームサービスでも、一度リクエストした内容は記憶されている。加湿器、パソコン用延長ケーブル、柔らかい枕やそば殻枕かといったゲストの好みはキチンと把握しており、いつ訪れても手にいれることができ、世界中のリッツに宿泊も用意されている。 さらに、リピーターの宿泊客は、スタッフからいつも名前で話しかけられる。「○○様お帰りなさいませ」「何々様、いつもの席をお取りしてございます。」 もう一つのわが家に帰ってきた心持ちになるようなもてなしが、ホテル内のどの施設でも自然に行われる。 リピーターでVIPの顧客のプロフィールはラインナップと呼ばれる毎朝行うスタッフ・ミーティングで全社員に知らされる。ホテル内をゲストが歩いていれば、すべてのスタッフはその顧客の情報をインプットされているため、サービスの対応をより高度化出来るのである。 さらにこのクラスの顧客になれば、たとえ機械設定によるモーニングコールでもPBXと呼ばれるコールセンターから、肉声で朝の目覚めを告げられ、それと同時に、ドアの前にはコーヒーや紅茶など顧客の好む朝の飲み物がトレイに用意されている。 裕福層は自宅や自分の国でしている事を、どこに出かけても同じようにしたがる傾向が強い。 裕福層は世界を駈け巡る。彼らの行く所にリッツ・カールトンが生まれる理由はここにある。 日本にも、リッツ・カールトンが、日本の裕福層の1~2%をターゲットに、まず、東京、大阪、横浜、に、その後、京都、福岡、箱根にオープン予定とのこと。 一般企業も、製造だけではなく、接客の重要性に着目し始めた今、日本のホテル業はさらなるサービスの進化が求められています。 |
◎それでは、もし興味があったら、ザ・リッツ・カールトン ”4つのスタンダード” も読んでみてください。あなたの中で何かが変わります。 |