今、世界の一流ホテルが理想としているそのコンセプトとは・・・のつづき


ザ・リッツ・カールトン 4つのスタンダード より


4つのスタンダード
ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーは、お客様に心のこもったサービスを提供することを理念に設立されました。

その彼らの哲学は、「モットー」「クレド(CREDO)」「サービスの3ステップ」そして「ベーシック」の4篇からなる“ゴールドスタンダード”に集約されて
います。そしてこの“ゴールドスタンダード”は、ポケットサイズのカードに収められており、約17,000人の全社員が常に携帯しこの理念を常に心に刻み実
践しています。

これから“ゴールドスタンダード”を説明したいと思います。まずは、第1のスタンダード、『モットー』から。
【紳士淑女をおもてなしする、私たちもまた紳士淑女である】
“We are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen”
これが、まず彼ら全体を貫く基本理念です。
つまり、スタッフ自らが紳士淑女になることを心がけていなければ、紳士淑女のお客様が何をご希望で、どのように感じているのか理解することができない、 という厳しい理念です。 ホテルサービスの最も重要な点は、単にお客様のリクエストに応えるだけでなく、ご要望をいち早く理解し、お客様に満足いただけるおもてなしをすること にあります。スタッフはこの理念を基本に、考え方、動作、話し方等を学び、紳士淑女としての素養を十分に身に付けるよう教育を受けます。
ザ・リッツ・カールトンならではの洗練された雰囲気と、気品高く心温まるサービスの原点はここにあります。
またお客様から何かを頼まれた時に、どんな場合でも“No”と言ってはいけないということも教えられます。常にニッコリと微笑み、「 Certainly(かしこ まりました)」あるいは「 My Pleasure(喜んで)」と応えること。どんな小さなことにも誠意をもって快く対応するように」と教育されています。
【お客様と同じ立場で感じ、考える】
「モットー」の言葉が教えるものは、お客様とサービスを提供する側は決して上下関係ではなく、常にお客様と同じ立場にたち、お客様の価値観、考え方、 感じ方を理解することではじめて最高のサービスが提供できる、ということだと思います。
こんなエピソードをお聞きしました。 リッツ・カールトンの社員食堂は、とてもおいしいそうです。それは、優秀なシェフを雇い、いい食材を使用して館内のレストランに負けない料理を提供し ているからだそうです。
またあるスタッフの方が転勤になった時、その方の送別会の行われた場所は、なんとそのホテルのバンケットルームだったそうです。一般で借りたならかな り高額なバンケットルームを、スタッフのために貸し切り、おいしいものが振る舞われたそうです。 いずれのエピソードも、リッツ・カールトンがそこで働く人々をいかに大切にしているかを物語っています。
また同時にそれは、スタッフがお客様と同じものを食し体験することで、お客様がどのような感想を持たれるか実感できるという、社員教育の一環であると も言えるでしょう。
このように、スタッフが常に最高のサービスをご提供できるよう教育をかかさず、また社員を大切にする姿勢を明確に示すリッツ・カールトンのやり方は、 とても素晴らしいものだと感じました
彼らのサービス哲学は『モットー』『クレド (CREDO)』『サービスの3ステッ プ』『ベーシック』の4篇からなる“ゴールドスタンダード”に集約されています。
そして前回は、そのうちの1番目『モットー』についてご紹介しました。
今回は残りの3つ、『クレド』から『ベーシック』までをご紹介します。
実はこの“ゴールドスタンダード”は、『モットー』→『クレド』→『サービスの3ステップ』→『ベーシック』の順に、抽象的な表現からより具体的にな ってゆきます。これらを通して「理念」が「実践」されていくのです。
『クレド(CREDO)』
以下の3項目から成る『クレド』は、『モットー』を少しかみ砕いて表したものと言えるでしょう。

1. リッツ・カールトン・ホテルは、お客様への心のこもったおもてなしと、快適さを提供することを、最も大切な使命と心得ています。

2. 私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために、最高のパーソナル・サービスと最高の施設を提供することをお約束します。

3. リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは、感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

一見、あまりにも当たり前のことのように見えますが、それを実践するのは難しいということでしょう。特に3番目の「お客様が言葉にされない願望やニーズ をも先読みしておこたえする」ことは容易ではないですよね。サービス業に従事する者が、最終的に行き着くところと言えるのではないでしょうか。
『サービスの3ステップ』
1. あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びするよう心がけます。

2. お客様のニーズを先読みしおこたえします。

3. 感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。できるだ   けお客様のお名前をそえるよう心がけます。
『ベーシック』

最後の“ベーシック”には、20項目の心得が記されています。
その内容はかなり細かく、例えば「ホテル館内でお客様に場所をたずねられたら、ただ指すのではなく、その場所までお客様をご案内します。」といった細 かな行動の基準まで示されています。(昔懐かしい“生徒手帳”に、ちょっと似ていますね。)
これら4つの“ゴールドスタンダード”によって、リッツ・カールトンの「理念」が「具体的行動」に移されてゆくのです。

ホルスト・シュルツィ社長は言います。 「どんなに他社が真似をしても、クレドに象徴されるゴールドスタンダードは業界初の我々独自のものであり、リッツ・カールトンの成功の基本なのです。」 “でも、どんなに立派な理念があっても、それを実行するスタッフが十分に自覚していなければ、何もならないのでは?” ・・そう思っていらっしゃる方が、いらっしゃるでしょう!? リッツ・カールトンでは、このようなサービス哲学を全うできるように、スタッフ教育や環境整備には企業をあげて力を注いでいます。
【従業員への約束】

“ゴールドスタンダード”には、もうひとつ『従業員への約束』という項目が記されています。
これはリッツ・カールトンがスタッフ一人一人にあてたメッ セージで、次のようなものです。
『リッツ・カールトンでは、お客様へお約束したサービスを提供する上で、紳士・淑女(即ちスタッフの皆さん)こそがもっとも大切な資源です。
信頼、誠実、尊敬、高潔、決意を原則とし、私たちは、個人と会社のためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。
多様性を尊重し、充実した生活を深め、個人のリッツ・カールトン・ミスティーク(神秘性)を高める・・・リッツ・カールトンは、このような職場環境を はぐくみます。』
この約束を具現化するためにリッツ・カールトンが行っていること、それを7つのトピックスに分けてご紹介したいと思います。
【その1:I Thank You!】

“I Thank You!” この言葉は、ホルスト・シュルツィ社長が年に2回、全リッツ・カールトンや支社に送るビデオレターで、スタッフに向かって、いつも最後に締めくくる言 葉だそうです。
一見キザのようですが、スタッフに対して感謝の意を必ず表すのは、些細なようで本当はなかなかできないことではないでしょうか。
また、スタッフのことも“ Employee(=雇われた人、使用人)”とは決して呼ばず、“Ladies and Gentlemen(紳士淑女の皆さん)”と呼ぶそうです。
お客様に満足していただくには、まずスタッフをそういう気持ちにさせることが必要であり、そのためには徹底して職場環境を整備しスタッフ教育に力を注 ぐ。
そういったポリシーが、この言葉の裏に見えてきます。 スタッフに対し、常に敬意と感謝の気持ちをもって接するホルスト・シュルツィ社長。
スタッフはその人柄や経営方針に忠誠を誓い、懸命に仕事をする。こ うしてリッツ・カールトンは国や言語、人種を問わず、一丸となって前進していくのですね。
【その2:“ゴールドスタンダード”の活用】

“ゴールドスタンダード”は、全スタッフに対して行われている全てのトレーニングの基本です。
新入社員に対してはオリエンテーションで丁寧に教え込まれ、その後も全スタッフが各部署ごとに毎日行う“ラインナップ”(朝礼・夕礼などの15分くらい のミーティング)において、より確かな理解を深めるために話し合われます。
毎日のラインナップで討議する議題は1週間ごとにテーマが決まっており、そのテーマに沿ったトピックが曜日ごとに7つ、1週間分まとめて毎週アトランタ にある本社から全ホテル・支社にFAXで送られます。
また、20項目のベーシックについては、全世界で同じ項目を毎日1つずつ読み合わせすることになっていま す。
リッツ・カールトンのホスピタリティを深く理解し、スタッフの意識を一丸とするために、全世界のリッツ・カールトン・ホテルで同じ題材について毎日話 し合われているのです。
【その3:全スタッフに公平・平等なチャンスを!】

スタッフを採用する際のポイントは、「臨機応変に思いやりのあるサービスを提供できる素質をもっていること」、そして「何事にも積極的に取り組む向上 心をもっていること」だそうです。
ホテル業・旅行業あるいはサービス業の経験がなくとも、全く関係ないとのこと。じっくりと教育をしていく体制が整っているそうです。
この「じっくり」というのが、今の日本の会社ではなかなかできないことかもしれませんね。どうしても“即戦力”を採用する傾向にあり、新人をじっくり 教育する時間はない、というところも多いのではないでしょうか。
またリッツ・カールトンは、一貫した採用方針と徹底したスタッフ教育体制を貫いています。
だからこそ、最高級のサービスを持続することができ、高い評 価を維持できているのだなとあらためて感じました。
さらに、向上心を強くもつスタッフをそろえるだけでなく、その素質を引き出し、より生かすために様々なチャンスを与えています。
現場スタッフからの新 しいサービスの開発を推進し、その提案を受け入れる体制が整っています。
常に向上心をもち、アグレッシブに行動する者ほど歓迎され、昇進も早いそうで す。
努力が確かな形となって報われる職場だからこそ、スタッフは常に前向きに仕事に取り組み、お客様に最高級のサービスが提供でき、企業自体も発展してい くといった好循環の体制が出来上がっているのですね。
【その4:個人の判断力の尊重】

リッツ・カールトンでは、万一クレームが発生した場合に備えて、全スタッフに最高2,000ドルまでの決済権を認めているといいます。
その理由の1つは、何かクレームが発生した場合、担当スタッフの判断と責任に於て速やかに最後まで対処できるようにするため、そしてもう1つはホテル マンとしての一般的職務を超えた、一段上のサービスを提供するためです。
一般に企業では、(内容にもよりますが)スタッフから現場の責任者、そして企業の責任者へと段階を経ていかないと結論が出ないことが多いと思います。
そうすると、迅速に対応できないばかりでなく責任の所在があいまいになる恐れもあります。
リッツ・カールトンのように、クレームを受けたスタッフが上司にわざわざ相談せず、即決で最後までケアできるというのは、ある意味で衝撃的なシステム ではないでしょうか。
なんといっても迅速な対応ができることが大きいですが、長期的に見れば、スタッフ個人個人が相当程度任されることにより、責任感と自立心、判断力が養 われ、自信がつきやりがいも持てるということも素晴らしい点だと思います。
こうして質の高いスタッフが育てば、質の高いサービスも必然的に提供できるに違いありません。
しかしこのシステムは、企業とスタッフとの間に相当厚い信頼関係が成り立っていなければ実現不可能です。
なかなか真似のできない大胆なことをやっての けるリッツ・カールトンは、スゴイ会社だと改めて思いました。
【その5:ミスの解決には原因の究明と分析】

どんなに優秀なスタッフでも、人間ですから時にはミスすることもあります。
お客様の意にそぐわないことが起これば、クレームも発生します。その場合、その後のスタッフの教育の仕方は非常に重要になってきます。
リッツ・カールトンではミスやクレームが起きた場合、スタッフは「問題解決レポート」を提出することになっています。
これは、そのミスがなぜ、どのよ うに起こったのかという詳しい過程を記したものです。 このレポートをもとにミスやクレームを徹底的に分析し、原因をつきとめ、適切な解決方法を考え、時には根本的な問題解決に結びつけていきます。
いわゆる“始末書”的な形式的な謝罪文でもなく、誰がやったかという“犯人探し”でもない。
責めるのではなく、原因を考える。深く理解したうえで反省 する。 とても微妙なところですが、ミスをステップアップの貴重なチャンスにするには、こうした教育体制は不可欠です。
リッツ・カールトンではそのシステムが 確立されており、素晴らしいことだと思います。
【その6:クオリティ部門による、サービスの品質管理】

リッツ・カールトンの各ホテルには、他のホテルチェーンにはない「クオリティ部門(品質管理部門)」があります。この部署の仕事は、サービスの「品質 管理」です。ホテル全体を中立的立場から客観的に見渡し、サービスが円滑に 行われているかどうかを常にチェックしています。
チェック作業は、次の2つのデータをもとに定期的に行っています。
1つめは、滞在されたお客様に直接調査を行い、データ化したもので、もう1つが、「サービス・クオリティ・インディケーター(SQI)」という彼ら独自のシ ステムです。
この「SQI」は12のチェック項目からなり、サービスの質を数値化できるようになっています。
例えばハウスキーピング部門では、清掃後の客室をランダムに選び、その12項目チェック。アメニティの補充がされてないなど何か不備があればその都度1点 ずつの加点をしていく、というシステムです。
この2つの数値化されたデータと現場からの「問題解決レポート」をもとに問題を分析し、原因をつきとめ確実に改善する。このことを専門に担当する部署 があるからこそ、リッツ・カールトンのサービスの質は高まることはあっても 落ちることはないのでしょう。
リッツ・カールトンのさまざまなこだわり、そしてオリジナリティあふれるサービスをご紹介いたします。
【街と歴史への敬意】

リッツ・カールトンでは、町のランドマークとして昔から親しまれてきた建物を、昔ながらの雰囲気を保ちつつ全面的に修復し、その町を代表的するホテル にするということを積極的に行っています。
実際にこのような“歴史的建造物”の改築は、全く新しく建てるよりも時間も費用も多くかかるのですが、その建物を愛してきた地元の人々に対する敬意と してリッツ・カールトンはこの方法を選んでいるのだそうです。
これはボストンやモントリオール、パサディナなどアメリカに多く見られます。
【個人宅のリビングのようなくつろぎを演出】

インテリアは全体に“優雅さ”と“暖かみ”を漂わせ、ヨーロッパの貴族の邸宅をイメージさせる雰囲気に統一しています。
緊張してしまうような“豪華さ”ではなく、あくまでも“くつろぎの場”を重視しているので、ロビーはこじんまりとしており、レセプションは敢えて奥ま った目立たない場所に配置しています。
白を基調としたバスルームは清潔感にあふれ、広々としたスペースには大理石の床。自慢のゆったりとしたバスタブは、バスタイムをゆっくりと楽しんでい ただけること間違いなしでしょう。
またレストランにも大きなこだわりがあります。
特にメインダイニングは、宿泊客以外の方がそれを目当てに訪れるような、地域で一番のレベルを目指しています。これはホテル王セザール・リッツの信念 『良いホテルに欠かせないのは料理だ』との思いを受け継いだものです。
【オリジナリティあふれるサービス】

次にご紹介する3つのサービスは、リッツ・カールトンの新しいサービスです。
まだ、一部でしか実施されていませんが、他のホテルにはない、心憎いオリジナルサービスなので、ぜひご紹介したいと思います。
また、これらはすべて各 地のリッツ・カールトンからの発案で実現に至ったものです。

●「テクノロジー・バトラー」 ---------------------------- これは、インターネット接続やパソコンなどの電子機器に関するトラブルの相談に、24時間電話で応じてくれるアシスタントサービスです。ビジネストラベ ラーにはなんとも心強いサービスですね。
1999年3月、リッツ・カールトン・クアラルンプールからの発案で、今はアトランタやハンティントン、バルセロナ、シンガポール、上海などにも常駐して います。

●ロマンチックなバスメニュー ----------------------------- 例えば、『シャンパンとストロベリーを味わいながら、キャンドルの灯りの下で花の香りのアロマバスを楽しむ』といった「セカンド・ハネムーン」など、 趣向を凝らしたメニューがいろいろと揃っています。
1999年、リッツ・カールトン・ミレニア・シンガポールからの発案で、今は香港、上海、クアラルンプール、アトランタでも取り入れています。(メニュー はホテルによって異なります。)

●「個人ショッパー」サービス ----------------------------- 2000年には、忙しいエグゼクティブにはうれしい、秘書兼お世話係を設置するところが登場しました。買い物を代行してくれる「個人ショッパー」サービス などです。リッツ・カールトン・香港からの発案で始まりました。
【さりげないプロの技】

他にもリッツ・カールトンには、お客様に快適な滞在をご提供するためのかく れたノウハウがあります。その例を2つをご紹介しましょう。
ぜひ実際に泊まって、経験してみてください!

●プロフェッショナルな連携プレー -------------------------------- お客様がホテルに到着すると、ドアマンはすかさず荷物についたネームタグなどから名前を確認し、「○○様、ようこそ」と名前をお呼びし出迎えます。と 同時に、装着しているレシーバーでレセプションに○○様の到着を連絡します。
すると、レセプションはすぐにチェックインの準備にとりかかり、キーの用意をします。
一方、ベルマンはレセプションからお客様の名前とルームナンバー を聞き、迅速に部屋まで荷物を運びます。
この一連の流れは、お客様を待たせずに一刻も早く客室に案内できるようにという心遣いが生んだ、全リッツ・カールトン共通のプロフェッショナルな連携 プレーです。

●完ぺきな顧客データベース -------------------------- 一度泊まったお客様については、好みの枕のタイプや愛読している新聞など、嗜好をなるべく多くリサーチし、全ホテル共有のデータベースに入力して、次 回泊れる際にはそのデータ上のことを反映できるような体制を整えています。
こうしたちょっとした心遣いに最高の居心地の良さを感じ、リッツ・カールトンマジックにかかりリピーターになってしまうのですね。


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