ホテルマンのシエスタより


Reverse mortgage
     


最近、持ち家(戸建・マンション)に住んでいる人の中には、使えるお金が不足しているという話を聞きます。
救済方法として、リバースモーゲージという方法が日本でも話題になりはじめました。

では、この方法での制度が早かったアメリカでは・・・

リバースモーゲージは、高齢者などが持ち家を担保に生活資金などの融資を受け、死亡時に一括返済する制度で、アメリカでは、1960年ごろから、この制度がスタートしています。
アメリカのリバースモーゲージの市場は、ここ20年で急に拡大しているようです。
アメリカのリバースモーゲージには、3種類あり、中でも低所得者向けの商品の利用が多いのですが、それには住宅都市開発省傘下の連邦連絡局による保険が大きく、保険料が割安で、融資主体が支払い不能になった場合契約者への支払いが保証、契約者に対する融資総額が住宅の資産価値を超えた場合に超過分を融資主体へ保証、といった保険内容となっています。
また、リバースモーゲージの制度の普及を促進するためのシステムとして、アメリカでは、リバースモーゲージ債権を政府系の住宅金融機関である米連邦抵当金庫が買い取って、資金調達を支援、信用補完する仕組みができあがっています。

日本よりはリバースモーゲージの普及しているアメリカの場合、金融機関に対して、地価下落・金利上昇・借り手が長生きして担保割れ、といった際の保護制度があることが安心材料にもなり、国際並の巨大市場を形成しているようです。


日本では・・・


リバースモーゲージとは 

リバースモーゲージとは、所有する不動産を担保に融資を受け、死亡時にその不動産を売却して一括返済する仕組みのことです。

      

住宅担保年金ともいい、自宅を手放さずに、融資を受けることができます。
このため、金利の低迷は長期化し、株価下落や年金問題など、老後の生活資金についての不安が高まる中で、老後の生活防衛手段として、活用が広がっています。
リバースモーゲージには、公的なものと民間のものがあります。
公的なものは、比較的低所得者を対象とするものが多く、民間のものは富裕層を対象とするものが多くなっています。

民間のものは、銀行が提供しているほか、大手ハウスメーカーが自社販売住宅を対象としているものもあります。


リバースモーゲージのニーズ

日本では、65歳以上の世帯の持ち家比率は高いため、リバースモーゲージのニーズは大きいものと考えられます。
特に、低所得者でも高所得者でもない世帯にとって、年金以外の生活資金として、持家を売却せずに活用できるのはメリットがあります。
国土交通省も、住宅改築用融資資金について、資金の9割までを保証する保険制度の導入を検討しています。


リバースモーゲージのメリット・デメリット

【メリット】

・住宅ローンのように収入の審査がない(無収入でもOK)
・高齢による年齢制限や借入期間の制限がない
・融資枠が一杯になっても死ぬまで担保不動産に住み続けられる
・存命中は元金の返済及び利息の支払いが原則不要

【デメリット】

・地価の著しい下落や金利の急上昇の場合に担保割れを引き起こす可能性がある
・長生きすればするほど、生活費が枯渇するリスクがある
・不動産の立地条件や規模・状況に応じて融資額が異なり、必ずしも希望通りの融資が受けられるとは限らない
・不動産評価が低いエリアでの希望額に応えられる融資が難しい
・相続人の了解が得られないと融資は実行されにくい。





要保護世帯のリバースモーゲージ

社会福祉協議会でやってます。

【条件】

・資産価値500万以上
・世帯全員65歳以上
・所有者は世帯主のみ。または世帯主と同居の親族(世帯主の妻)
・抵当権がついてないこと
・相続人の同意が取れること

審査に3ヶ月~6ヶ月

クリアした場合・・・

資産価値の7割まで貸付。
その中で毎月分割で支払われる。
月額は世帯が生活できる金額を社会福祉協議会で割り出す。(年金もらっている場合は、年金額を差し引いた額)
借り入れ総額が7割になった場合は生活保護に移行する。

償還は、世帯員が死亡したとき。
相続人が売却して貸付金を相殺。プラスがあれば相続人へ相続される。




貧困と生活保護  持ち家でも保護は可能、車は状況しだい

 生活保護制度については、いろいろと誤解が多く、福祉事務所の職員の中にも間違った説明をする人がけっこういるので、困ったものです。

 そのひとつが「持ち家だと、生活保護を受けられない」というもの。そんなことはありません。
持ち家に住んでいるときは、処分価値が著しく大きい場合を除き、保有が認められます。

 「自動車を持っていたらダメ」と言われることもありますが、昔と違って、一律にダメではありません。
クルマについて、かなり厳しいのは確かですが、以前に比べると保有を認められる範囲は広がってきました。
障害者の通勤・通院、公共交通の著しく不便な地域での通勤・通院、求職活動に必要な場合などは、条件つきでマイカーを使えます。過去に「保護か車か」の選択になって生活保護をあきらめていた人も、再検討してみる余地があるかもしれません。

持ち家は、そのまま住めるのが原則

 アパート・マンション・借家・公営住宅などの場合、家賃や地代は住宅扶助の対象です。
住宅扶助の上限額は地域ごとに、世帯人数に応じて厚生労働省が決めています。

 それを超す家賃でも、生活扶助の中から自分でやりくりして負担することは許されるので、「家賃が高いから、先に引っ越さないと保護できない」という説明は間違いです。
ただし、その状態が長く続く場合は、最低生活費を圧迫するので、住み慣れた住居から引っ越すことによって生活上の問題が生じる事情がなければ、転居を指導されます(転居に必要な費用は生活保護から出る)。

 では、持ち家はどうでしょうか。住まいは生活に必要なものなので、現に居住している不動産は、生活保護を受けても保有を認めるのが原則です。
最低生活の維持のために資産を活用しているという解釈です。
生活保護の要件である「資産の活用」は、売ることだけではないわけです。

売却を検討する目安は?

 持ち家の売却処分を求められるのは「処分価値が利用価値に比べて著しく大きい」ときです。
それにあたるかどうかは、福祉事務所がケース診断会議などを開いて検討します。

 厚労省が示している検討の目安は「標準3人世帯の生活扶助基準額と住宅扶助の特別基準額を合わせた額のおよそ10年分」です。
標準3人世帯とは、30代・20代の夫婦と4歳の子の3人暮らし。その福祉事務所の担当地域で最も高い基準額を用いて計算します。

 地域差がありますが、2000万~3000万円ぐらいになります。
不動産の価値は、固定資産税評価額(実勢価格の7割ぐらい)で見積もるのが一般的なようです。
これを目安に、ほかの事情も考慮して、売るべきかどうかを総合的に判断します。

 住宅の価格は昔より下がったので、大都市でも、小さな家なら売らずに済むでしょう。
生活に困ったときは、あわてて家を売るより、生活保護を考えたほうが賢明かもしれません。

 農業を含めた事業用の土地も、保有を認めるのが原則です。
田畑は、現に耕作しているか、おおむね3年以内に耕作する見込みがあるときは、処分価値が著しく大きい場合や必要以上に広い場合を除いて、保有を認められます。山林の利用も同様です。

住宅ローンがあるとき

 住宅ローンが残っている場合は、保護費の一部が資産形成にあてられることになるため、原則として、そのままの保護は認められません。
ただし返済総額が少なく、短期間で終わるときは、ローンが残っていても保護を認められます。
東京都の場合は、残額300万円以下、毎月の返済が生活扶助基準の15%以下、5年以内を目安としています。
金融機関の了解を得てローンの返済を繰り延べしてもらっているときも、そのまま保護が認められることがあります。

 すでに住宅ローンの返済が滞り、いずれ担保権が実行されるときは、資産形成にならないので、保護を受けるのに支障はありません。
あとから債務を整理します。家を失って別の住まいへ転居するのに必要な費用は、生活保護から出ます。

高齢者はリバースモーゲージが優先

 居住用不動産の持ち主が65歳以上(配偶者がいるときは配偶者も65歳以上)のときは、生活保護より先に「リバースモーゲージ制度」(要保護世帯向け長期生活支援資金貸付制度)を利用することを、2007年度から求められるようになりました。

 持ち家を担保に、各都道府県の社会福祉協議会が毎月一定額を貸し付け、持ち主が亡くなったら相続人による売却か担保権の実行によって回収するしくみです。
つまりは不動産を担保にした生活費ローンです。
実勢評価が500万円以上で、抵当権などの設定がない物件が対象で、毎月、保護基準額の1.5倍を貸します(収入があれば減額)。
貸し付けの限度額は評価額の7割、マンションは5割。
それを超えたら処分して生活保護に移行します。
利率は長期プライムレート(現在は年利1%余り)で上限3%。リバースモーゲージには民間金融機関の商品や、社協が扱う高齢者世帯向けのものもありますが、要保護世帯向けは、比較的小さな物件も対象になる点と、連帯保証人が要らない点が特徴です(相続人になる見込みの人の同意は得てから契約する)。

 生活保護を受けながら保有していた資産を子どもなどが相続するのは筋が通らないという考え方と、高齢者の生活保護が増えるのを抑えるという目的で、作られた制度です。
申し込んでから貸し付けが実行されるまでは、生活保護を利用できます。

自動車の所有が認められる場合

 クルマは、ぜいたく品でしょうか? 自動車を保有する世帯は80.1%に達しています(2015年3月末の内閣府「消費動向調査」)。

 しかし厚労省は、「単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率のいかんにかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っていない」という見解です。

 ただし、保有が認められる場合があり、しだいに拡大されてきました。
現在、以下のようなケースでは自動車の保有が認められます。家族を乗せる場合、家族が運転する場合も含まれます。

1 事業に用いる場合(農業、各種の商売、運送業、個人タクシーなど)

2 通勤に必要な場合(障害者、公共交通機関の利用が著しく困難な地域、または深夜勤務)

3 障害者・障害児の定期的な通院・通所・通学に必要な場合(身体障害に限らない)

4 公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、定期的な通院・通所・通学に用いる場合

5 失業や病気、けがで就労を中断しているが、6か月以内に就労による保護脱却が見込める場合
 (6か月を過ぎて保護継続中でも、就労に向けた具体的活動をしていれば約1年以内まで認める)

6 公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、求職活動に必要な場合

7 保育所などへの子どもの送り迎えに必要な場合

 障害者の通勤を除いて、車の処分価値が小さく、他の手段では移動が難しいこと、維持費をまかなえることなどが条件です。
これら以外でも、特別な事情があれば検討対象になりますが、認められないときは、処分価値のない古い自動車でも売却を求められるのが現状です。

地方の交通事情、障害者の事情

 地方では、バスの路線がない、あっても数時間に1本といった地域が広大に存在します。
商店のない集落もあります。
125cc以下のバイクは原則として保有が認められますが、元気な人でないと乗れません。徒歩や自転車で動ける範囲は限られています。

 買い物、一時的な病気、役所や団体への用事、各種の会合といった日常生活・社会生活にも、車がないと不自由きわまる地域がいっぱいあるのです。
都市部でも、移動に困難を伴う障害者にとって車は生活の必需品です。病気で移動に困難を伴う場合も同様でしょう。
このほか、ひとり親だと仕事と家事・育児を両立させるのに、車があるのとないのとでは大違いです。小さい子どもはしばしば病気にもなります。

 難病で歩けない妻を病院へ送り迎えするための自動車保有を理由に福祉事務所が保護を停止したのを違法とした判例(峰川訴訟福岡地裁判決、2009年5月29日、確定)や、両足の不自由な障害者が通院や日常生活のために自動車を使っていたことを理由に福祉事務所が保護を廃止したのを違法とした判例も出ました(枚方訴訟大阪地裁判決、2013年4月19日、確定)。

 車を借りて乗るのもいけない、と言う福祉事務所もあります。
たしかに厚労省は『生活保護手帳 別冊問答集』で、車の借用も原則として否定しているのですが、問答で例示したのは、遊びのために車を借りて乗り回しているケースです。
生活上の必要で借りることまで否定されるべきでしょうか。
通勤や子どもの急病のための車の借用を理由にした保護廃止を違法とした判例もあります(増永訴訟福岡地裁判決、1998年5月26日、確定)。

住民感情を理由に制限?

 車の保有を制限する理由について、厚労省や福祉事務所は「他の低所得世帯とのバランス」や「住民感情」を挙げ、値段のつかない車まで処分を求めています。
持ち家の保有がわりあい広く認められているのと比べ、同じ「資産活用」でも、極端な落差があります。

 車がないために日常生活・社会生活に不自由をきたしても、「他の住民からの見られ方」があるから我慢しろ、車に乗りたければ保護を受けるな、と言うとしたら、最低生活を維持し、自立を助けるという生活保護の趣旨に合わない気がします。
霞が関に通う中央の官僚は、車がなくても生活できるでしょうが、少なくとも交通不便な地方の実情、障害者の実情を直視してほしいものです。

*参考文献:『生活保護手帳 2015年度版』(中央法規出版)、『生活保護手帳 別冊問答集 2015』(同)、吉永純『生活保護の争点』(高菅出版)、日本弁護士連合会貧困問題対策本部『生活保護法的支援ハンドブック第2版』(民事法研究会)