ホテルマンのシエスタ



    工藤 直子さんの詩集から 

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     ねがいごと  たんぽぽはるか

 あいたくて
 あいたくて
 あいたくて
 あいたくて
 ・・・
 きょうも
 わたげを
 とばします
 
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    あいたくて

 だれかに あいたくて
 なにかに あいたくて
 生まれてきた ――
 そんな気がするのだけれど

 それが だれなのか なになのか
 あえるのは いつなのか ――
 おつかいの とちゅうで
 迷ってしまった子どもみたい
 とほうに くれている

 それでも 手のなかに
 みえないことづけを
 にぎりしめているような気がするから
 それを手わたさなくちゃ
 だから

 あいたくて

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    また あいたくて

 さよらな三角
 またきて四角
 またあえるね と
 うたってた

 さよらな春 さよなら夏
 さよなら秋 さよなら冬
 さよならを くりかえし
 さよならを つみかさね

 また あいたくて なにかに
 きょうも あるいていく

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   痛い

 すきになる ということは
 心を ちぎってあげるのか

 だから こんなに痛いのか

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   こころ

 「こころが くだける」というのは
 たとえばなしだと思っていた ゆうべまで
 今朝 こころはくだけていた ほんとうに

 ひとつひとつ かけらをひろう
 涙がでるのは
 かけらに日が射して まぶしいから

 くだけても これはわたしの こころ
 ていねいに ひろう

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   夜なか

 寝返りうたなきゃ さびしくて
 寝返りうつと なおさびしくて

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   花

 わたしは
 わたしの人生から
 出ていくことはできない

 ならば ここに
 花を植えよう

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   わからん

 手を のばしてみる
 その手の 指さすむこうに
 なにが あらわれるか……わからん

 足を踏みだそうと 宙に浮かす
 その足が 着地する世界は
 わたしを どこに導くか……わからん

 それが まったく わからんので
 それが まったく わからんからこそ
 まず 手をのばし 足を踏みだす