ホテルマンのシエスタ


ヤン・デンマン氏が大分前、週刊新潮に掲載した記事が面白かったので紹介します。

東京情報

潘基文は国連トップにふさわしい
S・P・I特派員 ヤン・デンマン

      

【東京発】
S・P・I通信で短期アルバイトをしている大学生の鹿島君が昼食後の休憩時間に気色ばんでいた。

「信じられますか? 国連事務総長の潘基文の発言。
安倍総理の姿勢を念頭に『正しい歴史認識が必要だ。』と訪問先のソウルで発言したそうです。
公正中立であるべき立場の人間がこんなことを言っていいんですか?」

 君はまだ若いな。国連が公正中立であるわけがないじゃないか。
そもそも、国連事務総長にはとびきり無能な人間が選ばれているんだ。

「どういうことですか?」

 日本人の国連観ほどおめでたいものはないね。「United Nations」を日本語に訳すとどうなる?

「国際連合ですよね」

違う。それは誤訳だ。United Nationsは連合国のことだ。
第二次大戦中に、日独伊の枢軸国に対し組まれたのが連合国である。
つまり、「国際連合」という誤訳からは、戦勝国の連合という本来の意味が失われている。
国連憲章も正確に訳せば「連合国憲章」となる。
つまり、戦勝国の規約なのだ。
だからこそ、そこには「戦勝国は敗戦国に対して特別な権利を持つ」と記載された旧敵国条項が存在する。
国連は本来戦勝国の集まりであり、敗戦国や中立国は含まれなかった。
1956年の日ソ国交回復後に日本が国連に参加することになっても、旧敵国条項が残り続けているのはそのためだ。

「国連軍に守ってもらう」
 鹿島君は茨城県出身の真面目な青年である。
「でも国連は平和のための組織ですよね。
安全保障理事会は、各国が軍隊を勝手に使うことを禁じています。
違反する国に対しては、国連加盟国全体が罰則を加えることができる。
だからこそ、国連の公平性は必要なのではないですか?」

 机上の空論だな。
安保理は決議をとる必要があるから、ただちに行動を起こすことはない。
そもそも「国連加盟国全体」が制裁を加えることなど不可能だ。それは68年間の国連の歴史が証明している。
 冷戦時代の安保理は拒否権の応酬の場にすぎなかったし、常設の「国連軍」など存在せず、国際紛争を解決したこともない。

 鹿島君が反論する。
「うーん。それでも、紛争を解決するための国際的な組織は必要なのではないでしょうか?」
 部下のラッセル君は臨時の子分ができてうれしそうだ。

「坂本義和という政治学者がいます。東大名誉教授で朝日新聞や岩波書店に担がれるような人物です。
彼はかつて日米安全保障条約に反対し、日本は非武装を貫くべきだと言った。
日本が外国から攻撃されたらどうするのかと問われると、『国連軍に守ってもらう』と言ったそうです」

 こんな人物が当時は論壇の寵児だった。
外務省にも国連信奉者が多く、1970年代後半から彼らは国連中心主義を唱えるようになる。

 鹿島君が熱くなっている理由を明かす。
「僕の伯父は国連職員なんです。それで卒論のテーマも国連を選びました。
たしかに国連は戦勝国がつくったものかもしれません。でも、敗戦国の日本やドイツも多額の財政貢献をしてきた。
旧敵国条項も憲章上消えていないだけで、実効性はなくなっていますよね。
中国やロシアが旧敵国条項について言及することもありますが、僕が言いたいのはそれでも国連は公正中立をめざすべきだということです」

都合がいい人物
 君の卒論の結果はそれかい。私が指導教官だったら、書き直しを命じるね。
国際社会に「中立」なんてものがあるわけがないだろう。
アメリカの元国務長官のダレスは「中立は不道徳である」とまで言っている。
今回問題になった潘基文は、それ以前の話で、韓国の片田舎にいるヒステリーの伯父さんにすぎない。
「事務総長という肩書きはいかにも偉そうだが、実際には事務所に座っているだけ。
潘は国連の総会にほとんど出席せず、韓国に帰れば故郷に錦を飾ったとばかりに、あちこちで自慢話をしてまわっている。
ミジンコ並みに小さな男だ。

 鹿島君が突っかかってくる。なかなか頼もしい。
「だからこそ問題なんです。もっと国連のトップにふさわしい人物が事務総長になるべきです」

 いいかい。事務総長は安保理の推薦によって選出される。
つまり、拒否権を持っている五大国にとって都合がいい人物が選ばれるわけだ。
凡庸でポストにしがみつくことだけが目的の人物が重宝される。
6代目事務総長のプトロス・ブトロス=ガーリは気骨があり、アメリカの要求を撥ね除けたことがある。
アメリカは激怒し、その後はより一層、大国の御用聞きのような無能な人間が選ばれるようになった。

 ラッセル君が深く頷く。
「潘基文は盧武鉉政権の外交通商部長官で、当時から反日派でした。
今回の発言は地元で気を許してペラペラ喋っているうちに本音が出たと言うだけの話。
『ニューズウィーク』誌や『フォーリン・ポリシー』誌をはじめ、世界中のメディアは潘を無能中の無能と評しています。
潘の趣味は利権の確保と世界中の大学から学位をもらうことくらいです」

 逆に言えば、シリア内戦問題で国連から派遣された特使のブラヒミやコソボ紛争を見事に調停したアハティサーリといった優秀な人間は、決して事務総長になることはできない。
 一方、国連事務次長だった明石康も難民高等弁務官だった緒方貞子も、退任後は小学生レベルの理想論しか唱えることができなかった。
これが国連人の典型である。

 日本人はあの滑稽な潘基文の姿を見ることで、国連幻想からそろそろ目を覚ましたらどうかね。

 鹿島君がコーヒーカップを片付けながら言う。
「世の中そんなに単純ではないということですね・・・・・・」

 それだけわかれば十分だ。
天安門事件に関しても中国政府の公式発表をそのまま受け入れているのが国連という三流組織である。
 朝鮮戦争、ベトナム戦争、ポルポトの大虐殺、イラク戦争・・・・・・。
こうした紛争を前にして、国連はいつの時代も完全に無力だった。

 ラッセル君がきれいにまとめた。
「結局、潘基文は国連のトップにもっともふさわしい人物であると言うことです」