ホテルマンのシエスタより



■ホテルのランクを星で表す (1つ星〜5つ星まで)


       


 海外でホテル選びをする時、基準となるのが「星の数」という人も多いでしょう。
しかしこの「星」というのがけっこうクセモノだったりします。
本当の星の意味を知ると、ホテル選びも違ってきます。

 ホテルの心地良さは「印象」で決まる?

 ホテルのランクを星で表す。これはずいぶんと古くから行われてきた習慣です。
有名なのがガイドブックの「ミシュラン」。(最大評価は、レストランは3星、ホテルは5星まで)

 ミシュランのホテル評価は5段階で、お城のマーク。パビリオンと呼びます。

 評価基準は、

1パビリオン (一つ星) = 適度な快適さ
2パビリオン (二つ星) = 快適
3パビリオン (三つ星) = 非常に快適
4パビリオン (四つ星) = 最高級の快適さ
5パビリオン (五つ星) = 豪華で最高級

となります。

 またマークは赤と黒があり、赤は「より快適」とされています。

 ちなみに日本のホテルでいうと、

5パビリオン赤が「マンダリンオリエンタル東京」「ザ・リッツ・カールトン東京」「フォーシーズンズホテル椿山荘 東京」「ザ・ペニンシュラ東京」など。
「帝国ホテル東京」が4パビリオン黒、
「ホテルメトロポリタン丸の内」が2パビリオン赤、
「ホテルヴィラフォンテーヌ汐留」が1パビリオン黒といった具合。

 しかしこの「快適」には具体的な基準がありません。あくまで印象。
それだけに評価が自分と合うかどうかがポイントとなります。


 ミシュランガイドと対極にあるのがアメリカのAAA(全米自動車協会)による「AAA Diamond Ratings」
という格付けです。

 アメリカ合衆国に加えカナダ、メキシコ、カリブ海のホテルを網羅し、評価は5段階。
ダイヤモンドの数で表されています。

 ちなみに評価基準となるのは清潔さや安全性、メンテナンスの良し悪し。
加えて家具やアメニティの質、サービスの良し悪しなど細かな基準が定められています。
このAAA評価は合理的なアメリカ人には評判がいいのですが、あまりに設備中心で「文化」や「伝統」が評価されないとして、ヨーロッパでは受け入れられていません。 

 それでもフランスでは基準のはっきりした格付け制度を国が定めています。
1986年にはじまったフランスのホテル格付けは2009年に大幅見なおしがなされ、より現実的なものとなりました。
ちなみに5つ星では「シングル20u、ダブル24u以上」「どの部屋もインターネットアクセス完備」「レセプションの従業員は2か国語以上話せる」「ディナーがホテル内で取れる」など。
 これが4つ星になると「ホテル内にレストランがある」に変わり、この違いがさすがフランス。
「リッツ・パリ」や「ハイアットリージェンシー・パリ・マドレーヌ」などが5つ星となっています。


 さて、星がアテにならないのがイタリア。

 州によって基準が違うというのですから、これは困ります。
しかも最初に格付けして以来まったく再調査がされていない州も多く、この鷹揚さはイタリアらしさでもありますが、利用者の役には立ちません。
2009年から規格統一の動きがありますが、まだ州の基準を使うホテルも多いようです。


 同じように判断に苦しむのが日本の旅行会社のホテルランク。

 たとえばある会社は[SL]、[L]、[A]、[B]、[C]の5段階評価で分けていますが、それは会社独自の基準で理由が公開されていません。
よくパンフレットで「〜ホテルもしくは同等クラス」というのは、この自社ランキングによるものです。
大手はある程度経験から同じようなクラスのホテルを割り出しているので、それなりに目安になりますが、会社によっては全く基準が定かでないことも。
ひどい場合はパンフレットで同等クラスにしたいという理由だけで決めてしまうなど、本末転倒な会社もあるので、このランキングは鵜呑みにできません。


 格付けはその基準がわかっていれば旅行の参考になります。
しかし実際に人が泊まる場所ですから、その日の客層や従業員によっても印象が変わります。
むやみに格付けに頼るよりは、ホテルの場所(駅や観光地に近いなど)、部屋の広さ、チェックインやチェックアウトの時間など、自分が必要とする条件で選ぶのがいちばんなのです。