ホテルマンのシエスタ
変見自在 週刊新潮 高山正之氏 記事より
2018.8.16
白人の敵だった
19世紀末、白人は黄色も黒も圧倒して世界の9割9分を支配した。
白人はいかに己が優れているかを形にしたかった。
ナルシシストだつた。
まず優れた頭脳を顕彰しよう。
宇宙から医学まで有色人種が思いもよらない発見をし、謎を解いてきた。
それでノーベル賞が成立された。
美しい肉体と躍動美も讃えたい。
それでクーベルタンがオリンピックの復活を唱えた。
社会進化論者の彼は、「胴長短足の見苦しい黄色人や表裏も分からない黒人」が復活五輪に参加するなど考えてもいなかった。
その有頂天を嘲笑う事態が相次ぎ起きた。
一つはパリの画廊「アールヌーボー」に並んだ日本の浮世絵だった。
ゴッホは腰を抜かし、ロートレックもモネも息を呑んだ。
世界一と信じた白人の審美眼も及ばない美の世界がそこにあった。
同じころ香港をペスト禍が見舞った。
14世紀の黒死病以来、何度も白人社会を脅かしてきた厄災の正体は白人の医学知識をもってしても解明されなかった。
ところが「北里柴三郎がきてすぐペスト菌を見つけ鼠が媒介することも突き止めた」と香港政庁が発表した。
「鼠を駆除したらペスト禍は沈静化した」と。
500年、白人が解けなかった謎を一見の黄色の知能が解いた。
衝撃だった。
そして三つ目が香港ペスト禍と同じ年に始まった日清戦争だった。
日本軍は勇敢だった。対して支那軍は卑劣だった。
牙山で始まった戦いでは軍は支那軍はだだ逃げ、たまに日本軍兵士を捕らえると目を抉り、鼻を削いで殺した。
しかし日本軍は仕返しもしなかった。
何より白人観戦武官を驚かせたのは日本軍が戦場で略奪も強姦もしなかったことだ。
旧約聖書民数記でモーゼが「略奪せよ。男は赤子まで殺せ。
人妻も殺せ。処女は神の贈り物だ。
生かして楽しめ」と言った。
キリスト教の民もそれを知らぬ支那人も当たり前に略奪と強姦と殺戮をやってきた。
現にその数年後に起きた義和団の乱では北京に入った独軍司令官アルデルゼーは6日間の略奪と強姦を兵士に下知している。
(アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、オランダが他国に対してとった植民地政策はどうであったか。
支那はどうであったか。のちに事実が発覚し歴史感が根本的に覆された・・・)
きれいに戦う日本軍は「眠れる獅子」と恐れられた支那に海でも陸でもみごとな勝ちを制した。
深い美意識と知能と勇猛さとキリスト教徒も及ばない寛容さをもつ日本人に白人は目を剝いた。
が、その10年後の日露戦争で驚きは脅威に変わった。
日本人は白人国家で初めて勝っただけではなかった。
ギリシャの昔から海戦は互いに船の舳先で相手艦の脇腹を衝く衝角戦法を採ってきた。
しかし日本艦は相手に触れもせず、装甲戦艦以下40隻のロシア艦隊を沈めてしまった。
日本は海戦の形まで変えたのだ。
「日本を脅威におもう」とセオドア・ルーズベルトは友人マハンに書いている。
白人国家の面子をかけ日本を倒すことが米国の為政者の宿命になった。
で、セオドアは早速日露講和の仲介に出て日本に一寸の領土も一銭の賠償金も入らないよう仕組んだ。
さらに厄介な朝鮮を日本に押し付けた。
二つの工作で日本経済を大きく疲弊させるのに成功した。
ウッドロー・ウイルソンは広報委員会(CPI)を使って日本と支那を離反させるのに成功し、ハーディングは日英同盟を破棄させ、日本を孤立させた。
支那は秦の昔から長城の内側が領土だが、フーバーは「満州もチベットも支那の領土」と嘘を捏ね、満州国を非合法化し、日本を国際連盟からも追い出した。
フランクリン・ルーズベルトは半世紀かけた日本潰しの仕上げに真珠湾に罠を仕掛け、なんとか白人の脅威を取り潰した。
しかし日本は甦り、経済でもマナーでも再び世界の驚嘆を誘っている。
ニューハンプシャー州議員ニック・レバッサーが「核爆弾二発では足りなかった」と言ったのはそういう劣等意識の裏返しだ。
なぜあの戦争が起きたのか。米国という鏡を通せばよく見えるはずた。
【週刊新潮】 「変見自在」、高山正之の記事に多少画像を加えさせて頂きました。
2018.8.16
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